呪われたジグゾーピース。徐々に輪郭の出てくる地獄絵図

もう3週間前になるのですが、行方不明展というホラー展覧会に1人で行ってきました。彼女を誘ってみたもののやんわり断られ、友人にもホラー好きがいないためのソロ活です。おそらくこの展覧会に来る客も自分みたいなピンのホラー好きばかりだろうなと思っていたらびっくり。そこには若いカップルやイケイケな学生グループばかりが群れをなしていました。Z世代はホラーが好きとは聞いていたもののまさかここまで浮くとは。この状況がホラーでした。

行方不明展は博物館×ホラーという独特の味わい。たとえばなんの変哲もない貼り紙に、意味深な解説がつくことでその展示品が不気味なものに変わるという、独特の演出がなされています。また展示品にはいかようにも解釈できる余地があり、背後にある物語を一人一人が考察できる仕組みになっていました。筆者は「失踪願望のある人があるスポットを使うことで、自分という存在を消せる場所に行く」というストーリーを展示物から感じ取りました。もちろんこの解釈が正解ではありません。

行方不明展に行ったとき、この展覧会の作者の1人である梨という人物に興味を持ち、この人の書いた小説を読んでみました。梨です。食べ物ではなく作者の名前です。

それが「6」という小説です。事前情報ほぼゼロの状態で読んでみました。

読んだ印象は呪われたジグゾーピースです。6章構成なのですが章が進むほどに物語の背景にある世界観がわかってくる構成になっています。話が進むにつれピースが嵌り、一枚の絵が浮かんでくる仕組みになっています。最初の章はよく分からないけど不気味な夢をみたような感覚。背後の設定がよく分からないけど不気味さだけは伝わってきます。2章、3章と展開していくにつれて、こういう小説だったのか、ということが分かってきます。そして不気味さも増してくる。頭の中でジグゾーピースが組み立てられていくのだけど、完成された絵は地獄絵図なんじゃないかと推測できてしまう。

そして6章でおぞましいクライマックスを迎えます。「読んでからも恐怖が続く」というのがこの小説のキャッチコピーなんですがよくわかります。軽くネタバレすると仏教の教えが絡んでくるのですが、それをこう底意地悪く料理とするのかと、ある意味感心してしまいました。

けして読後感は良くないホラーですが、それゆえに中毒性があります。最近のアトラクションホラーには飽きたという方は是非読んで下さい。纏わりつくような気持ち悪さを味わえますよ。

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