みなさん、突然ですが活字を読んで腹を抱えて笑った経験はありますか?僕はあります。読んだのが自宅だったのでセーフでしたが、電車だったら完全に変質者でした。
その本が僕が今回紹介したい小説、くっすん大黒です。
タイトルからしてただものではない佇まいがありますね。
この小説の作者の町田康氏は元パンクロッカーの小説家で芥川賞を受賞しています。純文学系の作家さんです。
純文学のイメージと言えば、どちらかと言うと暗くてシリアスなものではないでしょうか?この小説は違います。
どう違うのか?説明していきましょう。
この小説の内容を説明しようと思えば5・7・5で説明できます。
大黒を 捨てようとして 失敗し
ただそれだけです。大黒の置物が邪魔なので捨てようとして上手くいかない男の話です。それだけの内容です。それのどこに笑える要素があるのか?
それは文章を読んで頂ければわかります。
もう三日も飲んでいないのであって、実になんというかやれんよ。酒を飲まらしやがるのだもの。ホイスキーやら焼酎でいいのだが。あきまへんの?あきまへんの?ほんまに?一杯だけ。あきまへんの?ええわい。飲ましていらんわい。
一文を読んでもらえばわかりますね。ふざけているのです。この小説は全編この調子でふざけ倒しているのです。
この小説は大黒を捨てようとして失敗する男の顛末を、狂気に近い解像度で描写します。ほぼストップモーション。しかも語り口がふざけている。
それが当時の文壇には衝撃的だったわけです。この小説の評価は賞賛と罵倒の真っ二つに分かれました。
この落語のような文体の他にもこの小説の魅力はあります
登場人物全員ダメ人間
ほんとにびっくりするくらいまともな人間が出てこないんですよ。主人公の楠木は朝から晩まで酒を飲む生活を続けて、嫁から逃げられるし、主人公の友人菊池は親のすねをかじるニートだし、その他、エセパリジェンヌのチャーミーや、蛸のアートを作り続ける狂気のアーティスト上田など強烈な人間が出てきます。
ツッコミ不在のコントのようにダメ人間が出てきてはおかしなことをやらかす。
僕は文学って、ここまでふざけていいの?とある意味感動してしまいました。
まったく登場人物に共感できないし、ためになる話は一つもでてこない。この小説を読んで意識が高くなったり、成長することはほとんどない(むしろ意識は低くなるかも)と思うんですけど、不思議とだからこそ元気になる。そんな珍妙な小説です。
目に映る人が全員自分より幸せで、有能で価値があるように見える。そんな落ちている時に読んでみて下さい。きっと元気になりますよ。

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